【開業前必見!】居宅介護支援事業所は儲かる?数字のプロが徹底分析!


はじめに
「居宅介護支援事業所は儲からない」…そんな話を耳にしたことがあるかもしれません。独立を考えているケアマネジャーの方、あるいは開業を検討中の方、その噂は本当なのでしょうか? 本
記事では、「居宅介護支援事業所 儲かる」というキーワードで検索しつつも、不安を感じているあなたへ、数字のプロが関連統計データを徹底分析し、その実態を明らかにします。
居宅介護支援事業は、地域包括ケアシステムの要であり、社会貢献性の高い仕事です。しかし、経営は別問題。「介護事業経営実態調査」などの統計調査の概要を紹介し、収益性について客観的なデータに基づいた情報を提供します。
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各統計調査の概要
ここでは、介護サービスを取り巻く様々な統計調査、具体的には「介護事業経営実態調査」、「介護事業経営概況調査」、「介護サービス施設・事業所調査」について、それぞれの概要を分かりやすく解説していきます。これらの調査は、介護サービスの提供体制や経営状況を多角的に把握し、より良いサービス提供のための政策立案に役立てられています。
介護事業経営実態調査・経営概況調査
介護事業経営実態調査及び経営概況調査は、いずれも介護サービスを提供する施設や事業所の経営状況を把握し、報酬改定の影響を評価し、今後の報酬改定の基礎資料とすることを目的としています。
経営実態調査は、報酬改定の翌々年度に、報酬改定の翌年度の決算を対象として実施されます。
経営概況調査は、報酬改定の翌年度に、報酬改定年度と報酬改定の前年度の決算を対象として実施されます。



介護サービス施設・事業所調査
介護サービス施設・事業所調査は、全国の介護サービス施設の提供体制、提供内容等を把握し、介護サービスの定着面に着目した基盤整備を進めるための基礎資料を得ることを目的として、毎年実施されています。



介護事業経営実態調査・経営概況調査結果の分析
- 経営成績の状況
- 1施設・事業所当たり損益計算書
- 1施設・事業所当たり損益計算書(事業規模別)
居宅介護支援事業所の経営成績の状況
1施設・事業所当たり損益計算書
(単位:千円)
令和4年調査 | 令和5年調査 | |||||
令和2年度決算 | 令和3年度決算 | 令和4年度決算 | ||||
事業活動収益(売上高) | 14,304 | 100.0% | 15,060 | 100.0% | 16,212 | 100.0% |
事業活動費用(営業費用) | 13,764 | 96.2% | 14,220 | 94.4% | 15,156 | 93.5% |
給与費 | 11,460 | 80.1% | 11,808 | 78.3% | 12,468 | 76.9% |
減価償却費 | 192 | 1.3% | 204 | 1.4% | 240 | 1.5% |
国庫補助金等 特別積立金取崩額 | -12 | – | -12 | – | -24 | – |
その他 | 2,124 | 14.9% | 2,220 | 14.7% | 2,472 | 15.3% |
事業活動収支差(営業利益) | 540 | 3.8% | 840 | 5.6% | 1,056 | 6.5% |
収支差(当期純利益) | 252 | 1.8% | 468 | 3.1% | 744 | 4.6% |
介護支援専門員 常勤換算数(常勤率) | 2.3人 | 2.4人 | ||||
介護支援専門員 常勤換算一人当たり 事業活動収益(売上高) | 6,219 | 6,548 | 6,755 |


経営成績の状況は、事業活動収支差率(営業利益率)が3.8%~6.5%、収支差率(当期純利益率)が1.8~4.6%と、あまり高い水準ではないものの良化の傾向にあります。収支差率の分布の最頻値は5%~10%に位置。こちらも、R2~3決算が0~5%に位置していたことに鑑みると良化しています。
介護支援専門員常勤換算一人当たり事業活動収益(売上高)についても、年々良化の傾向にあります。原因としては、上限の緩和やICTの導入による効率化の影響によって、一人当たりの担当件数が増加していること、大規模化して特定事業所加算を算定している事業所が増加していることなどが推測されます。
本統計では、事業規模別の内訳も公表されているので、更に掘り下げて見ていきましょう。
1施設・事業所当たり売上高(事業規模別)
(単位:千円)
(令和4年度決算) | 令和5年調査利用者40人以下 | 利用者41~60人 | 利用者61~80人 | 利用者81~100人 | 利用者101~150人 | 利用者151~200人 | 利用者201人以上 |
事業活動収益(売上高) | 4,056 | 6,456 | 9,888 | 13,392 | 18,996 | 27,948 | 50,352 |
収支差(当期純利益) | -192 | -132 | -468 | 120 | -96 | 2,412 | 5,868 |
介護支援専門員 常勤換算数(常勤率) | 0.8人 | 1.1人 | 1.8人 | 2.1人 | 2.9人 | 4.0人 | 6.2人 |
介護支援専門員 常勤換算一人当たり 事業活動収益(売上高) | 5,070 | 5,869 | 5,493 | 6,377 | 6,550 | 6,987 | 8,121 |
上記の表によると、利用者数61~80人を除いて、規模が大きくなるほど、介護支援専門員常勤換算一人当たり事業活動収益(売上高)が増加しています。また、しっかりとした利益が出せているのは、利用者数151人以上の規模となるのがわかります。
居宅介護支援事業所は、一人ケアマネでの経営を目指される方も少なくはないと思われますが、上記の表を見ればその経営判断が如何に非効率的で合理的でないかが一目瞭然です。
大規模化や組織化には、経営の効率化、特定事業所加算の算定のほか、人材育成の充実、サービスの質向上、リスク分散など、様々なメリットがあります。
もちろん、小規模事業所ならではのきめ細やかなサービスや地域との密接な繋がりといった強みもあるでしょう。しかし、経営の安定化と持続的なサービス提供を目指すのであれば、大規模化・組織化という選択肢も真剣に検討する必要があるのではないでしょうか。
居宅介護支援事業所の介護サービス施設・事業所調査の分析
介護サービス施設・事業所調査によると、居宅介護支援事業所は、65歳以上の人口の増加及びそれに伴う要介護者の増加に反して、減少の傾向にあります。原因として、小規模の居宅介護支援事業所が、報酬が業務負担に見合わないとして、撤退していることが考えられます。
なぜ、特定事業所加算が設けられているのか。それは、組織的で持続可能性のあるサービスの提供を国が推奨していることに他なりません。一人ケアマネでの居宅介護支援事業所の立ち上げを検討されている方は、この現実をよく考えてから開業されることをオススメします。
(事業所数)
- 平成30年:40,956
- 令和元年:40,118(▲838)
- 令和2年:39,284(▲834)
- 令和3年:39,047(▲237)
- 令和4年:38,538(▲509)
まとめ
これまでの分析から、居宅介護支援事業所は、全体として決して高収益な事業ではないことが分かりました。特に、小規模事業所、一人ケアマネでの運営は、非常に厳しい経営状況にあることがデータから見て取れます。大規模事業所は比較的良好な収益を上げていますが、それでも楽観視はできません。
事業所数は減少傾向にあり、これは小規模事業所の撤退が主な要因と考えられます。国は特定事業所加算を設けるなど、組織的で持続可能なサービス提供を推奨しており、これは小規模、特に一人ケアマネでの経営の難しさを裏付けていると言えるでしょう。
結論として、居宅介護支援事業所の開業、特に一人ケアマネでの開業は、極めて慎重な判断が必要です。「儲かる」という期待は持たず、本記事で提示した統計データを熟読し、市場動向、競合状況、そして自身の経営能力、将来のキャリアプランを冷静に見極めた上で、それでもこの道を選ぶのか、覚悟を決めてください。