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【訪問看護】Q&Aで解説!特別管理加算とは【2024年度改定対応】


訪問看護に携わる中で、「特別管理加算」について「算定要件が複雑でよくわからない」「医療保険と介護保険でどう違うの?」「どんな記録が必要?」といった疑問をお持ちではありませんか?
特別管理加算は、医療依存度の高い利用者さんの在宅療養を支え、訪問看護ステーションの運営においても重要な加算です。特に2024年度(令和6年度)の報酬改定では、対象者の拡大や理学療法士等による訪問の減算ルールとの関連など、知っておくべき変更点がありました。
この記事では、訪問看護の特別管理加算について、皆さまが抱える疑問にQ&A形式でわかりやすくお答えします。加算I・IIの対象となる具体的な状態から、医療保険・介護保険それぞれの算定要件、必要な届出や記録、複数事業所が関わる場合のルール、そして最新の改定情報まで、網羅的に解説します。
この記事を読めば、特別管理加算に関する知識が整理され、日々の業務やステーション運営に自信を持って臨めるようになるはずです。
【基本的な考え方】


【訪問看護】
特別管理加算
基本的な考え方
訪問看護の「特別管理加算」とは、そもそも何ですか?何のためにあるのですか?
訪問看護の「特別管理加算」とは、特別な医療的管理(例えば、気管カニューレの管理、留置カテーテルの管理、重度の褥瘡処置、頻回な点滴など)が必要な利用者に対して、訪問看護ステーションが計画的に管理を行った場合に、月1回算定できる加算のことです。
この加算の目的は、医療依存度の高い利用者が住み慣れた自宅や地域で安心して質の高い療養生活を送れるように支援すること、そして、そのような高度な管理を行う訪問看護ステーションの労力や専門性を経済的に支えることにあります。
特別管理加算には「Ⅰ」と「Ⅱ」の2種類があるようですが、何が違うのですか?
はい、特別管理加算は利用者の状態や管理の重症度に応じて「特別管理加算Ⅰ」と「特別管理加算Ⅱ」に分かれています。
- 特別管理加算Ⅰ: より重症度が高い、または侵襲性の高い医療処置が必要な方が対象です。具体的には、在宅での悪性腫瘍の管理(麻薬注射、化学療法など)、気管切開や気管カニューレの使用、留置カテーテル(胃ろう、尿道カテーテルなど)を使用している状態などが該当します。
- 特別管理加算Ⅱ: 加算Ⅰには該当しないものの、継続的な特別な管理が必要な方が対象です。具体的には、在宅酸素療法、人工肛門・人工膀胱の管理、真皮を超える褥瘡(床ずれ)、週3日以上の点滴注射などが必要な状態が該当します。
もし、一人の利用者がⅠとⅡの両方の条件を満たす場合は、重症度の高い「加算Ⅰ」が優先して算定されます。同じ月にⅠとⅡの両方を算定することはできません。
【対象となる方・状態】


【訪問看護】
特別管理加算
対象となる方・状態
特別管理加算の対象となるのは、具体的にどのような状態の人ですか?
対象となるのは、厚生労働大臣が定める特別な管理が必要な状態にある利用者です。主な状態は以下の通りです。
【加算Ⅰ(重症度が高い方)】
- 在宅悪性腫瘍等患者指導管理を受けている(※令和6年度改定で明確化:在宅麻薬等注射指導管理、在宅腫瘍化学療法注射指導管理、在宅強心剤持続投与指導管理を含む)
- 在宅気管切開患者指導管理を受けている
- 気管カニューレを使用している
- 留置カテーテルを使用し、計画的な管理が行われている
【加算Ⅱ(上記以外で特別な管理が必要な方)】
- 在宅自己腹膜灌流(CAPD)、在宅血液透析(HHD)
- 在宅酸素療法(HOT)
- 在宅中心静脈栄養法(HPN/IVH)、在宅成分栄養経管栄養法
- 在宅自己導尿
- 在宅人工呼吸、在宅持続陽圧呼吸療法(CPAP)
- 在宅自己疼痛管理(PCA)
- 在宅肺高血圧症患者指導管理
- 人工肛門・人工膀胱(ストーマ)を設置している
- 真皮を超える褥瘡(床ずれ)がある
- 点滴注射が週3日以上必要(介護保険)/在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定(医療保険)
留置カテーテル(胃ろう、尿道カテーテルなど)が入っていれば、必ず加算Ⅰの対象になりますか?
いいえ、単にカテーテルが留置されているだけでは算定できません。訪問看護において、排液の性状・量の観察、薬剤の注入、水分バランスの計測・管理など、計画的な管理が行われていることが必要です。例えば、中心静脈ポートが留置されていても、訪問看護で薬剤注入などが行われていない場合は算定できません。記録で計画的な管理内容を示す必要があります。
褥瘡(床ずれ)は、どの程度の深さなら加算Ⅱの対象になりますか?また、記録で注意することはありますか?
褥瘡が特別管理加算Ⅱの対象となるのは、深さが真皮を超えている状態(NPUAP分類Ⅲ度またはⅣ度、DESIGN-R分類D3、D4またはD5に相当)です。算定には、週1回以上の定期的な状態観察・アセスメント・評価(部位、サイズ、深さ、ポケット、滲出液、肉芽・壊死組織の状態、炎症・感染兆候など)を行い、発生部位や実施したケア内容について訪問看護記録書に詳細に記録することが必要です。
点滴注射は、週に何日以上行うと加算Ⅱの対象になりますか?医師の指示についても教えてください。
点滴注射の扱いは、医療保険と介護保険で異なります。
- 介護保険の場合: 主治医により週3日以上の点滴注射が必要であると認められ、訪問看護師等が実際に週3日以上実施している場合に加算Ⅱの対象となります。医師の指示は「在宅患者訪問点滴注射指示書」である必要はありませんが、点滴注射の指示は原則として7日ごとに更新が必要です。週3日に満たない場合は算定できません。
- 医療保険の場合: 「在宅患者訪問点滴注射管理指導料」を算定している状態が対象となります。
どちらの場合も、実施内容や医師への報告状況などを記録する必要があります。
在宅酸素療法(HOT)を受けていれば、必ず特別管理加算Ⅱの対象になりますか?注意点はありますか?
在宅酸素療法指導管理を受けている状態は特別管理加算Ⅱの対象となり得ますが、注意点があります。算定対象となる月において、実際に酸素吸入を行っている必要があります。もし、その月に一度も酸素吸入の実績がなければ、たとえ機器が設置されていても算定できません。日々の訪問看護記録に使用状況を記録しておくことが重要です。
在宅自己疼痛管理(PCA)とは具体的にどのような状態ですか?飲み薬での痛み止めだけでは対象になりませんか?
在宅自己疼痛管理(PCA)が特別管理加算Ⅱの対象となるのは、持続的な痛みに対して、PCAポンプなどを用いて注射薬(医療用麻薬など)を患者自身が管理している状態を指します。内服薬(飲み薬)のみで痛みをコントロールしている場合は、この加算の対象とはなりません。
利用者が痰の吸引を必要としている場合、それだけで特別管理加算の対象になりますか?
いいえ、単に吸引処置が必要であるだけでは、特別管理加算の算定対象とはなりません。ただし、気管カニューレを使用している、あるいは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態で、それに伴い吸引が必要な場合は、特別管理加算Ⅰの対象となります。
【算定の条件・手続き】


【訪問看護】
特別管理加算
算定の条件・手続き
特別管理加算を算定するには、訪問看護ステーションとしてどのような条件を満たし、手続き(届出)をする必要がありますか?
算定には、計画的な管理の実施と記録が共通で必要ですが、体制要件と届出は医療保険と介護保険で異なります。
- 医療保険の場合
- 必須要件: 「24時間対応体制加算」を算定できる体制を整え、その旨を管轄の地方厚生(支)局に届け出ていることが必須です。特別管理加算単独での届出はできません。
- 届出先: 地方厚生(支)局。
- 介護保険の場合
- 必須要件ではない: 24時間対応体制(緊急時訪問看護加算)の届出は必須ではありません。ただし、体制があることが望ましいとされています。
- 届出: 加算を算定する旨を、事前に事業所のある都道府県または市町村に届け出る必要があります。通常、算定開始月の前月15日までの届出が必要です。
- 届出先: 都道府県または市町村。
どちらの保険の場合も、利用者の状態に応じた訪問看護計画を作成し、計画に基づいて管理を行い、その内容を詳細に記録することが共通の要件となります。
なぜ医療保険の特別管理加算では「24時間対応体制加算の届出」が必須なのですか?
医療保険の訪問看護の対象となる利用者には、急性期病院退院直後の方、難病の方、末期がんの方など、病状が不安定で急変リスクが高い場合が多いと考えられます。このような医療ニーズが高く緊急性の高い利用者への特別な管理には、日中だけでなく夜間・休日を含めた緊急時の対応能力が不可欠であるとの判断から、24時間対応体制の整備が前提条件とされていると考えられます。
医療保険で特別管理加算を算定する場合、「緊急時訪問看護加算」自体も算定している必要がありますか?
いいえ、「緊急時訪問看護加算」の算定自体は、医療保険の特別管理加算の必須要件ではありません。ただし、特別管理加算の必須要件である「24時間対応体制加算の届出」を行うためには、実質的に緊急時訪問看護加算(介護保険)と同様の、24時間連絡・対応できる体制が求められます。根底にある体制整備の考え方は共通・類似しています。
特別管理加算を算定するには、どのような記録を残す必要がありますか?記録が不十分だとどうなりますか?
加算の根拠を示すために、詳細な記録が不可欠です。主に以下の記録が必要です。
- 訪問看護計画書: 加算対象となる処置や管理(褥瘡ケア、カテーテル管理など)に関する具体的な計画。
- 訪問看護記録書(日々の記録)
- 褥瘡: 週1回以上の状態評価(部位、サイズ、深さ、ポケット、滲出液、肉芽・壊死組織、感染兆候など)、実施したケア内容を記録。
- 点滴注射: 日時、薬剤、量、速度、ルート、実施中の観察、バイタルサイン、終了後の状態、医師の指示内容、医師への報告内容などを記録(介護保険は7日毎の指示更新確認も)。
- 留置カテーテル: 挿入部の観察、固定状況、接続確認、排液の性状・量・臭い、カテーテル交換・管理、皮膚ケア、トラブル対応、水分バランス計測など、計画的な管理内容を記録。
- その他: 在宅酸素の使用状況、ストーマケア内容、自己導尿や自己疼痛管理の指導・状況確認、人工呼吸器の設定確認など、対象管理に応じた具体的な記録。
- 関連記録: 主治医との連携(指示受け、報告、相談)、他職種との情報共有、緊急時対応、家族指導などの記録。
記録は「計画に基づき、どのようなアセスメントと評価を経て、そのケアを実施したか」がわかるように具体的に記載することが重要です。記録が不十分な場合、加算の算定が認められない、あるいは監査等で返還を求められるリスクがあります。
特別管理加算の届出は、どのような書類(様式)で行いますか?
- 医療保険: 「24時間対応体制加算・特別管理加算に係る届出書(届出・変更・取消し)」(別紙様式2)を使用します。
- 介護保険: 「緊急時訪問看護加算・特別管理体制・ターミナルケア体制に係る届出書」(別紙16)を使用します。
【医療保険と介護保険の違い】


【訪問看護】
特別管理加算
医療保険と介護保険の違い
医療保険と介護保険で、特別管理加算のルールは具体的にどう違うのですか?
A15: 共通点も多いですが、運用上の重要な違いがあります。主な違いは以下の表の通りです。
項目 | 医療保険 | 介護保険 |
---|---|---|
算定額/単位数 | Ⅰ相当:5,000円/月 Ⅱ相当:2,500円/月 | Ⅰ:500単位/月 Ⅱ:250単位/月 |
必須となる体制 | 24時間対応体制加算の届出が必須 | 特になし (緊急時連絡体制の整備は望ましい) |
複数事業所による算定 | 可能 (各事業所が要件を満たせば) | 不可 (1利用者につき1事業所のみ、事業所間で合議が必要) |
区分支給限度基準額 | 制度上なし | 対象外 (限度額に含まれない) |
届出先 | 地方厚生(支)局 | 都道府県・市町村 |
一人の利用者に複数の訪問看護ステーションが関わっている場合、特別管理加算はどうなりますか?
医療保険と介護保険で扱いが異なります。
- 医療保険の場合: それぞれの訪問看護ステーションが算定要件(24時間対応体制の届出を含む)を満たしていれば、各ステーションで特別管理加算を算定することが可能です。
- 介護保険の場合: 一人の利用者に対して特別管理加算を算定できるのは、いずれか1か所の訪問看護ステーションのみです。どのステーションが算定するかは、関係するステーション間で話し合って(合議して)決める必要があります。
介護保険の特別管理加算は、区分支給限度基準額に含まれますか?
いいえ、介護保険の特別管理加算は、区分支給限度基準額の算定対象外です。つまり、この加算を算定しても、利用者の月々の介護保険サービス利用可能枠(限度額)を圧迫することはありません。これは、医療依存度が高い方が費用を心配せずに必要なサービスを受けられるようにするための配慮です。
【算定・請求について】


【訪問看護】
特別管理加算
算定・請求について
介護保険の特別管理加算は、具体的にいつ、どのように請求(算定)するのですか?
介護保険の特別管理加算は、原則として、その月の最初の介護保険給付対象となる訪問看護を行った日に、その日の訪問看護費(所定単位数)に加算して請求します。月1回の定額(単位数)算定となります。医療保険の場合は、訪問看護療養費明細書に記載して請求します。
【関連サービス・加算】


【訪問看護】
特別管理加算
関連サービス・加算
特別管理加算は、通常の訪問看護サービス以外でも算定されることはありますか?また、複数のサービスを利用している場合の注意点は?
はい、訪問看護サービス以外にも、「看護小規模多機能型居宅介護(看多機)」や「定期巡回・随時対応型訪問介護看護」においても、同様の趣旨で特別管理加算(またはそれに準ずる加算)が設定されている場合があります。
ただし、注意点として、同一月内に、例えば介護保険の訪問看護で特別管理加算を算定した場合、同月に定期巡回・随時対応型訪問介護看護や看護小規模多機能型居宅介護で同様の加算を算定することはできません(逆も同様です)。医療保険の訪問看護とも重複して算定できません。これは、同じ管理状態に対して複数のサービスから二重に評価されることを防ぐためです。
令和6年度改定で新設された「専門管理加算」とは何ですか?特別管理加算との関係は?
「専門管理加算」(250単位/月)は、令和6年度改定で新設された加算です。これは、緩和ケア、褥瘡ケア、人工肛門・膀胱ケアに関する専門的な研修を修了した看護師などが、その専門知識を活かして計画的な管理を行った場合に算定できます。
特別管理加算とは別の加算であり、算定要件を満たせば、特別管理加算と併せて算定することが可能です。専門性の高い看護をさらに評価する目的で導入されました。
【令和6年度(2024年度)改定の影響】
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【訪問看護】
特別管理加算
令和6年度(2024年度)改定の影響
令和6年度(2024年度)の改定で、特別管理加算に関して何か変更点はありましたか?
はい、主に以下の変更点がありました。
- 加算Ⅰの対象者拡大: 医療保険・介護保険ともに、加算Ⅰ(重症度が高い方)の対象に以下の3つの在宅療養指導管理が追加されました。
- 在宅麻薬等注射指導管理
- 在宅腫瘍化学療法注射指導管理
- 在宅強心剤持続投与指導管理 (これにより、在宅での緩和ケアや高度な薬物療法を行う利用者への評価が手厚くなりました。)
- 関連制度の変更(リハビリ減算導入): 理学療法士等による訪問看護に関する新たな減算規定が導入され、その回避要件の一つに特別管理加算等の算定実績が含まれたことで、特別管理加算の経営上の重要性が増しました。
令和6年度改定で導入された「理学療法士等による訪問看護の減算」について、もう少し詳しく教えてください。特別管理加算との関係は?
この減算は、訪問看護ステーションが看護中心の役割を果たすことを促すルールです。以下のいずれかに該当する場合、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(PT・OT・ST)による訪問1回あたり8単位が減算されます(令和6年6月1日施行)。
- 前年度の訪問回数比較: 前年度にPT・OT・STによる訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えている場合(訪問看護費と介護予防訪問看護費を合算してカウント)。
- 加算の算定実績: 算定月の前6か月間に、「緊急時訪問看護加算」「特別管理加算(ⅠまたはⅡ)」「看護体制強化加算」のいずれも算定していない場合(前6か月に1件でも実績があれば回避可)。
特別管理加算との関係: この減算ルールにより、PT・OT・STの訪問が多いステーションは、看護職員の訪問を増やすか、あるいは緊急時対応や重度者対応の体制・実績を示す必要があります。特別管理加算を算定することは、減算を回避する手段の一つとなり、ステーションにとってその戦略的重要性は格段に高まりました。
【その他】


【訪問看護】
特別管理加算
その他
リハビリ専門職の訪問が中心の場合でも、特別管理加算は算定できますか?
原則として、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士によるリハビリテーション目的の訪問が中心で、看護職員による計画的な管理が行われていないと判断される場合は、特別管理加算は算定できません。特別管理加算はあくまで「看護職員による特別な医学的管理」を評価するものであるためです。