放課後等デイサービスとは? 制度の概要から利用方法、気になる疑問まで徹底解説


「放課後等デイサービス」という言葉を聞いたことはありますか? お子さまの成長や発達に心配がある保護者の方、あるいは福祉・教育関係の仕事に携わっている方であれば、一度は耳にしたことがあるかもしれません。
放課後等デイサービスは、障害のあるお子さまや発達に特性のあるお子さまが、放課後や長期休暇中に利用できる福祉サービスです。学校や家庭とは異なる環境で、専門的な支援を受けながら、さまざまな経験を積むことができます。
しかし、「具体的にどんなサービスなの?」「うちの子は利用できるの?」「費用はどれくらいかかるの?」など、疑問や不安を感じている方も少なくないでしょう。
この記事では、放課後等デイサービスの制度の概要から、利用対象者、サービス内容、利用料金、利用までの流れ、さらには事業所選びのポイントまで、放課後等デイサービスに関する情報を幅広く、そして分かりやすく解説していきます。
放課後等デイサービスとは? 制度の基本を理解しよう
放課後等デイサービスは、2012年(平成24年)の児童福祉法改正によって創設された、比較的新しい福祉サービスです。それまで、障害児向けの通所サービスは未就学児と就学児が一緒に利用していましたが、法改正により、未就学児向けの「児童発達支援」と就学児向けの「放課後等デイサービス」に分けられました。
放課後等デイサービスの定義
児童福祉法では、放課後等デイサービスを次のように定義しています。
学校教育法第1条に規定する学校(幼稚園及び大学を除く。)又は専修学校等(同法第124条に規定する専修学校及び同法第134条第1項に規定する各種学校をいう。以下同じ。)に就学している障害児(専修学校等に就学している障害児にあっては、その福祉の増進を図るため、授業の終了後又は休業日における支援の必要があると市町村長(特別区の区長を含む。)が認める者に限る。)につき、授業の終了後又は休業日に児童発達支援センターその他の内閣府令で定める施設に通わせ、生活能力の向上のために必要な支援、社会との交流の促進その他の便宜を供与することをいう。
児童福祉法 第六条の二の二③
簡単に言うと、障害のある小学生・中学生・高校生(原則6歳~18歳)が、放課後や夏休みなどの長期休暇中に、生活能力向上のための訓練や社会との交流促進などの支援を受けられる場所、それが放課後等デイサービスです。
放課後等デイサービスの目的と役割
放課後等デイサービスの目的は、単にお子さまを預かることではありません。厚生労働省の「放課後等デイサービスガイドライン」では、以下の4つの目標を掲げ、一人ひとりの子どもの成長と、それを支える家族、そして地域全体を視野に入れた支援を行うことを目指しています。
- 生きる力の育成とこどもの育ちの充実:
- 学校や家庭とは異なる時間、空間、人、そして多様な遊びや体験活動を通じて、子どもたちが自己肯定感や自己有用感を高め、自分らしく生きる力を育むことを目指します。
- 単に知識やスキルを身につけるだけでなく、日常生活や社会生活を円滑に営むために必要な力を、障害の状態や発達の状況、特性に応じて養います。
- 子どもの自尊心や主体性を育て、発達上のニーズに合わせて、将来を見据えた支援を行います。
- 家族への支援を通じたこどもの暮らしや育ちの安定:
- 子どもの成長には、家族のサポートが不可欠です。放課後等デイサービスは、保護者だけでなく、きょうだいを含めた家族全体を支援します。
- 子育ての悩み相談や、家庭での養育に関するアドバイス、一時的なケアの代行などを通じて、家族が安心して子育てに取り組めるようサポートします。
- 家族全体のウェルビーイング(幸福感、満足感)の向上を目指します。
- こどもと地域のつながりの実現:
- 子どもたちが地域社会の一員として、さまざまな活動に参加できるよう支援します。
- 地域の学校や放課後児童クラブ(学童保育)、児童館など、他の子育て支援サービスとの連携を図り、子どもたちの地域での居場所づくりをサポートします。
- 地域住民との交流を通じて、子どもたちの社会性を育み、地域への愛着を深めます。
- 地域で安心して暮らすことができる基盤づくりの推進:
- 子どもたちが将来にわたって、地域で安心して暮らしていけるよう、包括的な支援体制の構築を目指します。
- 地域の関係機関(保健、医療、福祉、教育、労働など)や他の放課後等デイサービス事業所、児童発達支援センターなどと連携し、切れ目のない一貫した支援を提供します。
- 子どもと家族が、地域の中で孤立することなく、必要な時に必要なサポートを受けられるような体制づくりに貢献します。
放課後等デイサービスは、これら4つの目標を達成するために、お子さま一人ひとりの状況に応じた質の高い支援を提供し、子どもたちの成長と発達、そして家族と地域の幸せを支えていきます。
誰が利用できる? 放課後等デイサービスの対象者
放課後等デイサービスの利用対象者は、原則として以下の条件を満たすお子さまです。
- 学校教育法に規定する学校(幼稚園、大学を除く)に就学していること
- 障害があること、または発達に特性があり、支援が必要と認められること
「障害があること」の定義は、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)など、幅広い障害が含まれます。必ずしも障害者手帳の所持は必要ありません。医師や児童相談所、市町村保健センターなどによって、療育の必要性が認められれば利用対象となります。
年齢制限について
原則として6歳から18歳までの就学児が対象ですが、例外もあります。18歳を過ぎても、引き続き放課後等デイサービスの利用が必要と認められる場合は、最長で20歳まで利用を継続できます。
不登校のお子さまも利用可能
学校に籍があれば、不登校のお子さまでも放課後等デイサービスを利用できます。
どんな支援が受けられる? 放課後等デイサービスのサービス内容
放課後等デイサービスでは、お子さま一人ひとりの状況やニーズに合わせて、さまざまな支援が提供されます。厚生労働省のガイドラインでは、以下の4つの基本活動を組み合わせて支援を行うことが示されています。
- 自立支援と日常生活の充実のための活動:
- 基本的な生活習慣の確立を支援します。(例:着替え、食事、排泄など)
- 生活能力向上のための訓練を行います。(例:金銭管理、公共交通機関の利用など)
- 成功体験を積み重ね、自己肯定感を高めるような活動を行います。
- 学校との連携を図り、学校教育と一貫性のある支援を行います。
- 創作活動:
- 表現する喜びを体験できるような活動を行います。(例:絵画、工作、音楽など)
- 自然に触れる機会を設け、豊かな感性を育みます。(例:園芸、自然観察など)
- 地域交流の機会の提供:
- 地域のイベントやボランティアとの交流を通じて、社会経験の幅を広げます。
- 他の社会福祉事業や地域の学習・体験活動との連携を図ります。
- 余暇の提供:
- お子さまが自分で遊びや活動を選べるよう、多彩なプログラムを用意します。
- リラックスできる環境で、ゆったりと過ごせる時間を提供します。
これらの基本活動は、以下の5つの領域の視点から、総合的に提供されます。
- 健康・生活: 健康状態の維持・改善、生活習慣の形成など
- 運動・感覚: 姿勢と運動・動作の基本的技能の向上など
- 認知・行動: 認知の特性への対応、行動障害への予防・対応など
- 言語・コミュニケーション: コミュニケーション能力の向上など
- 人間関係・社会性: 情緒の安定、他者との関わりの形成など
個別支援計画の作成
放課後等デイサービスでは、利用者全員に一律の支援を提供するわけではありません。お子さま一人ひとりの目標や課題に合わせて、「個別支援計画」が作成されます。この計画に基づいて、各施設で個別に組まれた支援プログラムが実施されます。
具体的なプログラム例
施設によって提供されるプログラムは異なりますが、一般的には以下のようなものがあります。
- 運動プログラム(例:体操、ダンス、ボール遊びなど)
- 音楽プログラム(例:楽器演奏、歌唱、リトミックなど)
- 創作活動プログラム(例:絵画、工作、手芸など)
- パソコンを使ったプログラム
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)
- 学習支援(宿題のサポートなど)
利用料金はどれくらい? 放課後等デイサービスの費用
放課後等デイサービスの利用料金は、国が定める基準に基づいて、各自治体が設定しています。
利用者負担は原則1割
放課後等デイサービスは、障害児給付費の対象となる福祉サービスです。そのため、利用料金の9割は自治体が負担し、利用者の自己負担は原則として1割となります。
所得に応じた負担上限月額
さらに、世帯の所得に応じて、1ヶ月あたりの負担上限額が定められています。
その他の費用
利用料金のほかに、おやつ代や教材費、行事参加費などの実費がかかる場合があります。これらの費用は施設によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
どうやって利用する? 放課後等デイサービスの利用手続き
放課後等デイサービスを利用するためには、いくつかの手続きが必要です。一般的な流れは以下の通りです。
- 相談:
- まずは、お住まいの市区町村の福祉担当窓口や、障害児相談支援事業所に相談します。
- 利用したいサービスの内容や、希望する曜日・時間帯などを伝えます。
- 地域の放課後等デイサービス事業所の情報を提供してもらうこともできます。
- 施設見学・体験:
- 利用したい施設が見つかったら、直接施設に連絡し、見学や体験を申し込みます。
- 施設の雰囲気や支援内容、費用などを確認し、お子さまに合うかどうかを検討します。
- 障害児支援利用計画案の作成:
- 利用するサービスが決まったら、受給者証の申請に必要な「障害児支援利用計画案」を作成します。
- 計画案は、相談支援事業所に作成を依頼するか、保護者が自分で作成する(セルフプラン)こともできます。
- 申請:
- 市区町村の窓口に、障害児支援利用計画案と、障害児通所給付費支給申請書などの必要書類を提出します。
- 必要書類は自治体によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
- 調査・審査:
- 市区町村が、利用対象となるか、必要なサービス量(日数)などを調査・審査します。
- 受給者証の交付:
- 審査の結果、利用が認められると、「通所受給者証」が交付されます。
- 契約・利用開始:
- 受給者証と障害児支援利用計画を持って、利用する施設と契約を結びます。
- 個別支援計画の説明を受け、契約手続きが完了したら、サービスの利用が開始されます。
受給者証をすでに持っている場合
すでに受給者証を持っている場合は、利用したい放課後等デイサービス事業所に直接問い合わせ、空き状況を確認します。空きがあれば、見学や体験を経て、利用契約を結ぶことができます。
失敗しない! 放課後等デイサービス事業所選びのポイント
放課後等デイサービス事業所は、それぞれ特色があります。お子さまに合った事業所を選ぶためのポイントをいくつかご紹介します。
- 支援内容:
- お子さまの興味や特性に合ったプログラムが提供されているかを確認しましょう。
- 個別支援計画に基づいて、どのような支援が行われるのかを具体的に確認しましょう。
- 専門的な資格を持ったスタッフが配置されているかどうかも重要なポイントです。
- 施設の雰囲気:
- 見学や体験を通じて、施設の雰囲気やスタッフの対応を確認しましょう。
- お子さまが安心して過ごせる環境かどうかを見極めましょう。
- 立地・送迎:
- 自宅や学校からの通いやすさも考慮しましょう。
- 送迎サービスがある場合は、送迎範囲や時間帯を確認しましょう。
- 費用:
- 利用料金だけでなく、おやつ代や教材費などの実費も確認しましょう。
- 自治体の助成制度がある場合は、利用できるかどうかを確認しましょう。
- 情報公開:
- 事業所のホームページやパンフレットなどで、情報が公開されているかを確認しましょう。
- 厚生労働省のガイドラインに基づく自己評価結果が公表されているかどうかも、参考にすると良いでしょう。
まとめ:放課後等デイサービスは、お子さまと家族の強い味方
放課後等デイサービスは、障害のあるお子さまや発達に特性のあるお子さまが、放課後や長期休暇中に安心して過ごせる場所であり、成長をサポートしてくれる心強い存在です。
この記事でご紹介した情報を参考に、ぜひ、お子さまに合った放課後等デイサービスを見つけてください。そして、放課後等デイサービスを上手に活用して、お子さまの可能性を広げ、より豊かな毎日を送りましょう。