重度訪問介護とは?制度の仕組み・対象者・サービス内容・利用料を徹底解説


近年、住み慣れた自宅での生活を希望する方が増える中、重い障害を持つ方々を支える「重度訪問介護」という制度が注目されています。しかし、「重度訪問介護」という言葉は聞いたことがあっても、具体的な内容や利用方法については詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、重度訪問介護の制度概要から、対象となる方、利用できるサービス内容、気になる利用料まで、詳しく解説していきます。また、類似する制度である「居宅介護」との違いについても、支援時間、空白時間、対象者、支援内容の4つの観点から詳細に比較し、重度訪問介護の利用を検討されている方、ご家族、支援者の方々にとって役立つ情報を提供します。
重度訪問介護とは?制度の目的と概要
重度訪問介護は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつです。重度の肢体不自由、知的障害、または精神障害によって、常に介護が必要な方が、自宅で安心して生活できるよう支援することを目的としています。
具体的には、ホームヘルパーが利用者の自宅を訪問し、入浴、排せつ、食事などの「身体介護」、調理、洗濯、掃除などの「家事援助」、外出時の移動をサポートする「移動介護」など、生活全般にわたる援助を総合的に提供します。
この制度の大きな特徴は、長時間の利用を前提としている点です。常に介護を必要とする重度障害者の多様なニーズに対応するため、柔軟かつ包括的なサービス提供が可能となっています。
重度訪問介護の対象者となるには?
重度訪問介護を利用できるのは、重度の知的障害もしくは精神障害により行動上著しい困難を有する障害者であって常時介護を要する方です。具体的には、障害支援区分が4以上であり、以下のいずれかに該当する方です。
- 二肢以上に麻痺等があり、「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも「支援が不要」以外と認定されている。
- 障害支援区分の認定調査項目のうち、行動関連項目等(12項目)の合計点数が10点以上である。
なお、経過措置により、平成18年9月末日現在において、日常生活支援の支給決定を受けていた方で、上記要件に該当しない方のうち、障害支援区分が3以上で、日常生活支援及び外出介護の月の支給決定時間の合計が125時間を超える方(当該者の障害支援区分の有効期間に限る)も対象となります。
※ 障害支援区分とは、障害の程度を総合的に示す区分であり、市町村の審査会で判定されます。
重度訪問介護で利用できるサービス内容
重度訪問介護では、利用者の状況やニーズに合わせて、以下のような幅広いサービスが提供されます。
- 身体介護:入浴、排せつ、食事、着替えの介助など、身体に直接触れて行う介護。
- 家事援助:調理、洗濯、掃除、生活必需品の買い物など、日常生活に必要な家事の援助。
- 移動介護:外出時における移動の支援や、移動中の介護。
- その他:生活等に関する相談や助言、見守りなど。
重度訪問介護は、これらのサービスを区別せず、一体的に提供することが特徴です。これにより、利用者の状況変化に柔軟に対応し、必要な時に必要なサービスを提供することが可能になります。
重度訪問介護と居宅介護の違いを徹底比較
重度訪問介護とよく似た制度に「居宅介護」があります。どちらも自宅で介護サービスを受けることができる制度ですが、いくつかの重要な違いがあります。ここでは、4つの観点から詳しく比較してみましょう。
(1)支援のための1回あたりの時間の違い
- 重度訪問介護:原則として3時間以上の支援からスタートします。ただし、様々な事情により、例外的に1時間からの利用や、1時間以上の利用が認められる場合もあります。長時間支援が基本であり、利用者の状況に合わせて柔軟に対応します。
- 居宅介護:身体介護の場合は1回あたり原則3時間以内、家事援助の場合は1回あたり原則1.5時間以内と、支援時間に制限があります。短時間の支援が中心となります。
(2)支援した後の、次の支援に入るまでの空白の時間帯について
- 重度訪問介護:支援と支援の間に空白時間があっても問題ありません。空白時間の長さに関する規定はなく、30分後に次の支援に入ることも可能です。利用者の生活リズムに合わせた柔軟な支援スケジュールを組むことができます。
- 居宅介護:原則として、支援と次の支援の間には2時間以上の空白時間を設けなければなりません。
(3)支援を受ける対象者の違い
- 重度訪問介護:障害支援区分4以上で、二肢以上に麻痺があり、「歩行」「移乗」「移動」「排尿」「排便」のいずれも「支援が不要」以外と認定されている方が対象です。より重度の障害を持つ方を対象としています。
- 居宅介護:障害支援区分1以上の方が「身体介護」「家事援助」の支援を、区分2以上で「歩行」「移乗」「移動」「排尿」「排便」について支援が必要な方が通院等介助(身体介護伴う場合)の支援を受けることができます。比較的軽度の障害を持つ方も対象となります。
(4)支援内容の違い
- 重度訪問介護:身体介護、家事援助、移動介護、その他(見守り等)を区別なく、総合的に提供します。事前に大まかなプランニングは行いますが、それに縛られず、日常生活で生じる様々な介護の事態に柔軟に対応します。「見守り等の支援とともに」行うことが特徴であり、利用者の状況変化に即座に対応できます。
- 居宅介護:身体介護、家事援助、通院等介助など、サービス内容が明確に区分されています。事前に作成した詳細な計画書に基づいてサービスが提供され、計画外のサービスは原則として受けられません。
【重度訪問介護と居宅介護の違い 比較表】
項目 | 重度訪問介護 | 居宅介護 |
---|---|---|
サービス内容 | 身体介護、家事援助、移動介護、その他(見守り等)を包括的に提供。区別なく一体的に提供されるため、柔軟な対応が可能。 | 身体介護、家事援助、通院等介助など、サービス内容が明確に区分されている。事前に作成した計画書に基づいてサービスが提供されるため、計画外のサービスは原則として受けられない。 |
対象者 | 障害支援区分4以上で、二肢以上に麻痺等があり、「歩行」「移乗」「排尿」「排便」のいずれも「支援が不要」以外と認定されている方、または行動関連項目等の合計点数が10点以上の方。 | 障害支援区分1以上の方(通院等乗降介助は区分2以上で、かつ特定の条件を満たす方)。 |
サービス単価 | 長時間の利用を前提としているため、比較的低めに設定されている。サービス内容による単価の区分はない。 | 短時間の利用を前提としているため、比較的高い。サービス内容ごとに単価が設定されている。 |
1回あたりの支援時間 | 原則3時間以上。例外的に1時間からの利用も可能。 | 身体介護は原則3時間以内、家事援助は原則1.5時間以内。 |
支援間の空白時間 | 規定なし。柔軟に対応可能。 | 原則2時間以上。 |
特徴 | 長時間利用、柔軟な対応、包括的なサービス提供、見守り重視、日常生活全般の支援 | 短時間利用、計画に基づいたサービス提供、サービス内容の明確な区分 |
重度訪問介護は、より重度の障害を持つ方を対象とし、長時間の介護を必要とする場合に適しています。一方、居宅介護は、比較的軽度の障害を持つ方や、短時間のサービス利用を希望する方に適しています。
重度訪問介護の利用料について
重重度訪問介護の利用料は、原則として1割負担です。ただし、所得に応じて負担上限月額が設定されており、それを超える負担はありません。
- 18歳以上の場合は、利用者本人とその配偶者の所得
- 18歳未満の場合は、児童を監護する保護者の属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得
上記の所得状況に応じて、負担上限月額が決定されます。また、負担上限月額よりもサービス費用の1割の金額の方が低い場合は、1割の金額が自己負担となります。
具体的な負担上限月額や計算方法については、お住まいの市区町村の障害福祉窓口にお問い合わせください。
重度訪問介護を利用するまでの流れ
重度訪問介護を利用するには、以下の手順を踏む必要があります。
- 相談:まずは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所に相談します。
- 申請:利用を希望する場合は、市区町村に申請を行います。
- 調査・認定:障害支援区分の認定調査を受け、審査会で障害支援区分が決定されます。
- サービス等利用計画案の作成:相談支援事業者が、利用者の希望や状況に応じたサービス等利用計画案を作成します。
- 支給決定:市区町村がサービス等利用計画案を基に、サービスの支給量を決定し、受給者証が交付されます。
- 事業者との契約:利用者は、重度訪問介護を提供する事業者を選び、契約を結びます。
- サービス利用開始:契約に基づき、サービスの利用が開始されます。
まとめ:重度訪問介護で安心の在宅生活を
重度訪問介護は、重い障害を持つ方が住み慣れた自宅で安心して生活を続けるための、心強いサポート制度です。長時間の介護が必要な方、様々なニーズに柔軟に対応してほしい方にとって、最適な選択肢となり得ます。また、「見守り」を重視した支援など、幅広いニーズに対応できるのも大きな特徴です。
この記事で解説した内容を参考に、重度訪問介護の利用を検討してみてはいかがでしょうか。ご不明な点や詳細については、お住まいの市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所にご相談ください。