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旅費規程の適正運用で賢く節税!メリット・デメリットから税務調査対策まで徹底解説

旅費規程の適正運用で賢く節税!メリット・デメリットから税務調査対策まで徹底解説のイメージ画像

企業経営において出張は不可欠な活動ですが、それに伴う交通費、宿泊費、日当などの経費処理は複雑さを伴います。これらの処理を効率化し、社内での公平性を保つルールが「旅費規程」です。

旅費規程は単なる経費精算ルールに留まらず、適切に設計・運用することで、法人税や消費税、役員・従業員の所得税・住民税、社会保険料に至るまで、多岐にわたる合法的な税負担の軽減につながる可能性があります。

しかし、その節税効果を享受し、税務調査で否認されるリスクを回避するためには、日本の税法、関連通達、判例を正確に理解し、自社の実態に合った規程を作成・運用することが不可欠です。安易な導入や実態の伴わない運用は、かえって税務リスクを高めることになりかねません。

この記事では、旅費規程の適正な活用について、法的根拠から具体的なメリット・デメリット、税務調査で否認されないための規程作成・運用のポイント、潜むリスクと対策、成功のためのポイントまで、網羅的に解説します。

旅費規程とは?

まず、旅費規程の基本的な内容について確認しましょう。

定義と目的

旅費規程とは、役員や従業員が会社の業務のために出張する際に発生する交通費、宿泊費、日当などの旅費の取り扱いについて定めた社内ルールのことです。

主な目的は以下の通りです。

  1. 経費精算手続きの標準化
    • 出張に関する経費精算のルールを統一し、申請・承認・精算のプロセスを明確にします。
  2. 社内公平性の確保
    • 役職や出張内容に応じた客観的な基準を設けることで、不公平感をなくします。
  3. 経理処理の効率化
    • 精算基準が明確になることで、経理担当者の確認作業や処理時間を削減します。
  4. コンプライアンスの確保
    • 税法上、適正と認められる経費処理の根拠となります。

特に、日当のように実費精算が難しい費用について、実費弁償の代替として規程に基づいて一定額を支給(定額支給)することを可能にし、その妥当性を担保する役割は重要です。

法的根拠 (日本)

旅費規程に基づく旅費(特に日当)が非課税となり、会社の損金として認められる法的根拠は、主に以下の法律や通達に基づいています。

  • 所得税法 第9条第1項第4号
    • 「給与所得を有する者が勤務する場所を離れてその職務を遂行するため旅行をし、…その旅行に必要な支出に充てるため支給される金品で、その旅行について通常必要であると認められるもの」は非課税と定めています。これが、日当等が非課税となる直接的な根拠です。
  • 所得税基本通達 9-3
    • 上記の「通常必要であると認められるもの」の解釈について、具体的な判断基準を示しています。具体的には、「その支給額が、支給する会社の役員及び従業員のすべてを通じて、適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか」(社内バランス)と、「その支給額が、支給する会社と同業種、同規模の他の会社等が一般的に支給している金額に照らして、相当と認められるものであるかどうか」(社外比較)の2点を考慮するとしています。
  • 消費税法
    • 国内出張に関して、旅費規程に基づき支給される旅費(交通費、宿泊費、日当)のうち、「通常必要であると認められる部分」の金額は、課税仕入れに該当し、仕入税額控除の対象となります。領収書のない日当でも、帳簿への適切な記載があれば控除が可能です(詳細は後述)。ただし、海外出張に関する費用は原則対象外です。

重要なのは、日本の税法では非課税となる日当等の具体的な上限額が定められていない点です。このため、実務上「社会通念上相当」と判断される水準を、企業が所得税法・通達の趣旨(「通常必要」「適正なバランス」「相当と認められる」)に照らして設定し、その合理性を説明できるようにしておく必要があります。

対象となる経費

旅費規程で一般的に定められる経費は以下の通りです。

  • 交通費
    • 電車、新幹線、飛行機、バスなどの公共交通機関の運賃。規程によりタクシー利用や自家用車利用時のガソリン代、高速料金、駐車場代も含まれることがあります。
  • 宿泊費
    • ホテルや旅館などの宿泊施設の料金。
  • 日当(出張手当)
    • 出張中の食事代や細かな諸雑費(通信費、近距離交通費など)を補填するための手当。通常の勤務地を離れることによる追加的な負担を考慮したものです。
  • その他
    • 規程によっては、転勤に伴う「移転料(赴任費用)」 や、機内泊・船中泊時の食費等を補填する「食卓料」 なども対象となる場合があります。

これらの経費は、「実費精算」(領収書に基づき実費を支払う)または「定額支給」(規程で定められた一定額を支払う)のいずれか、あるいは組み合わせで支給されます。日当は定額支給が一般的です。

旅費規程による節税効果

適切に整備・運用された旅費規程は、法人と個人の双方に適正な節税効果をもたらします。

法人側のメリット

法人税・消費税の削減

  • 法人税
    • 旅費規程に基づき適正に支払われた出張旅費(日当含む)は、全額が法人の損金(経費)として算入されます。これにより課税所得が圧縮され、法人税等の負担が軽減されます。もし規程がないまま日当を支給すると、給与や役員賞与とみなされ、損金算入が否認されるリスクがあります。
  • 消費税(仕入税額控除)
    • 原則
      国内出張の旅費(日当含む)は、「通常必要であると認められる」範囲内で課税仕入れとなり、仕入税額控除の対象となります。
    • インボイス制度下の特例(出張旅費等特例)
      インボイス制度導入後も、従業員等に支給する日当、宿泊費、交通費のうち「通常必要と認められる」金額については、インボイス(適格請求書)の保存がなくとも、帳簿への一定事項の記載があれば仕入税額控除が認められます。この特例は、実費精算の場合でも適用可能です。帳簿には、旅行者名、旅行年月日、旅行先、支払額などの記載が必要です。
    • 公共交通機関特例との違い
      3万円未満の公共交通機関(船舶、バス、鉄道)の利用については、インボイスの交付義務が免除され、帳簿のみで控除が可能な別の特例(公共交通機関特例)があります。出張旅費等特例は、日当や宿泊費、3万円以上の交通費も対象となる点で異なります。
    • 規程外・高額の場合
      規程がなく、従業員が立て替えた交通費が3万円以上の場合、原則としてその交通費に係るインボイスと、従業員が作成した立替金精算書の保存が必要となり、手続きが煩雑になります。適切な旅費規程を整備しておくことで、この手間を回避できます。
    • 会社直接払い
      会社が交通機関や宿泊施設に直接費用を支払う場合は、原則として出張旅費等特例の対象外となります(従業員への支給ではないため)。ただし、3万円未満の公共交通機関利用であれば公共交通機関特例の適用は可能です。
    • 法人税法上の注意点
      消費税法上の特例でインボイス保存が不要な場合でも、法人税法上は経費の根拠として領収書等の証憑保存が別途必要となる点に注意が必要です。

役員・従業員側のメリット

所得税・住民税の非課税

旅費規程に基づき「通常必要であると認められる範囲内」で支給される日当や、定額支給される宿泊費と実費との差額などは、受け取る役員・従業員にとって非課税所得として扱われます。これは、同じ金額を給与や手当として受け取る場合は課税対象となるため、実質的な手取り額が増加します。

社会保険料の削減

非課税とされる日当等は、健康保険料や厚生年金保険料などの社会保険料の算定基礎となる報酬(標準報酬月額)に含まれません。社会保険料は労使折半負担のため、従業員だけでなく、会社の負担軽減にも直接つながります。所得税法上は一部非課税枠があるものの、社会保険料算定基礎には全額含まれる通勤手当とは扱いが異なります。

このように、旅費規程は法人税・消費税(会社)、所得税・住民税(個人)、社会保険料(会社・個人)という多方面で適正な税負担軽減に寄与します。これは単なる経費精算の効率化を超え、従業員のモチベーション向上や実質的な報酬還元策としても機能しうる可能性を秘めています。

個人事業主との比較(法人化のメリット)

個人事業主の場合、事業主本人に支払う日当は経費として認められません。しかし、法人成りすれば、社長(元個人事業主)に対して旅費規程に基づき日当を支給することが可能となり、それは法人の経費(損金)として認められ、かつ社長個人の所得としては非課税扱いとなります。これは法人化を検討する上でのメリットの一つとなり得ます。

旅費規程導入のデメリットとコスト

多くのメリットがある一方、旅費規程の導入・運用にはデメリットやコストも伴います。

事務負担の増加

規程の作成、周知、運用管理には相応の事務負担が発生します。

  • 規程作成・整備
    • 自社の実情に合わせた詳細なルール作りが必要です。
  • 周知・教育
    • 全役員・従業員への説明や理解促進が必要です。
  • 運用・管理
    • 出張申請受付、承認、経費計算・支給、精算処理、書類保管といった継続的な業務が発生します。

日当の定額支給は領収書チェックの手間を省きますが、規程自体の管理や出張の事実確認などの基本的な事務負担は残ります。経費精算システムの導入で軽減を図ることも有効です。

会社経費の増加可能性

特に日当を新設する場合や、定額支給額が実費より高くなった場合、会社全体の支出が増加する可能性があります。

  • 日当の新規発生
    • これまで支給していなければ、その分支出が増えます。
  • 定額支給による増加
    • 定額支給額(特に宿泊費)が実費平均より高い場合、差額分が増加します。
  • 全従業員への適用
    • 規程は原則、全対象者に公平に適用する必要があるため、これまで一部にしか支給していなかった場合、対象者増により総額が増える可能性があります。

導入前に、出張実態の把握と、導入後の総支出額・税効果のシミュレーションが不可欠です。

導入コスト

  • 専門家への相談費用
    • 税理士や社労士に規程作成やレビューを依頼する場合の費用。
  • システム導入・改修費用
    • 経費精算システムを導入・改修する場合の費用。

これらのコストも考慮して導入を判断する必要があります。

税務調査で否認されない旅費規程の作り方

節税効果を確実に享受するには、税務調査で適正と認められる規程の作成と規程に沿った安定運用が必須です。

規程に盛り込むべき必須項目

税務調査に耐えうる規程には、以下の項目を具体的に盛り込むことが推奨されます。

  1. 目的
    • 規程の主旨(業務上の出張に関する手続きと旅費支給)を明記。
  2. 適用範囲
    • 対象者(原則全役員・従業員)を明確化。雇用形態別や役員別規程の場合はその旨記載。
  3. 出張の定義
    • 何を出張とするかの基準(移動距離、宿泊有無など)を具体的に設定。
  4. 旅費の種類
    • 支給対象となる経費(交通費、宿泊費、日当など)を列挙。
  5. 支給基準
    • 各旅費の計算方法、金額(実費or定額)、役職別、国内・海外別、期間別などの基準。交通機関等級(例:役員のグリーン車利用許可は36.3%、航空機ビジネスクラス利用許可は22.2%といった実態も参考に)や宿泊費上限も明記。
  6. 申請・承認手続き
    • 事前申請・承認プロセス。
  7. 精算手続き
    • 事後報告(出張報告書)、精算方法、提出書類、期限。
  8. 特別規定
    • 出張中の事故・病気対応、予定変更時の扱いなど。
  9. 施行日・改定履歴
    • 施行日と改定履歴を明記。

「社会通念上相当」な金額設定の重要性

日当や宿泊費の支給額は、所得税法上の「通常必要であると認められる」「適正なバランス」「相当と認められる」という要件を満たし、実務上「社会通念上相当」な範囲内であることが絶対条件です。この基準からの逸脱は、税務調査で否認される最大の要因となります。日当が実費弁償の代替であるという性質上、この妥当性が求められます。

「社会通念上相当」かは、所得税基本通達9-3に基づき、①社内バランスと②社外比較で判断されます。

金額設定の参考基準

  • 民間企業の調査データ
    産労総合研究所などの調査結果は、「社外比較」の観点から有力な参考資料です。
    • 国内日当(2019年調査例)
      日帰り:部長クラス 2,666円、一般社員 2,094円
      宿泊あり:部長クラス 2,900円、一般社員 2,400円
    • 国内宿泊料(2023年調査)
      全地域一律支給の平均 8,606円、実費精算上限額の平均 9,117円。
    • 海外宿泊料(2023年調査例)
      地域別平均では、アジア 18,042円、北米 22,910円、欧州 24,778円。
    • 注意点
      最近の円安・物価高騰下でも、海外出張旅費を「増額しない」と回答した企業が64.9%(2023年調査)というデータもあり、規程額と実態経費との乖離リスクも考慮が必要です。
  • 国家公務員の基準
    • 「国家公務員等の旅費に関する法律」の基準も、税務署が参照する目安の一つです。
  • 同業他社の水準
    • 可能であれば、同業種・同規模企業の支給水準も参考にします。
  • 実務上の目安(参考)
    • 税理士等が実務上の参考として提示する金額帯(例:国内日当で保守的に5千円/日、ある程度許容されるラインとして1.5万円/日など)もありますが、これらは法的な保証ではなく、あくまで目安です。

合理的な根拠の説明責任

単にベンチマークに合わせるだけでなく、自社の事業内容、出張の性質、役職者の責任などを考慮し、設定した金額について合理的な根拠を説明できるようにしておくことが極めて重要です。税負担軽減効果だけを追求した高額設定は絶対に避け、低すぎてもメリットがないため、バランス感覚が求められます。

否認リスクの具体例

過去には、日当が高額すぎると判断されたり、業務関連性が疑われたりして否認されたケースがあります。例えば、青年会議所の会合出席費用を旅費としたケース、非常勤役員への日当支給が実態にそぐわないとされたケース、期末に規程を遡及適用して一括支給したケースなどが挙げられます。

運用の一貫性と公平性

作成した規程は、全対象者に対し、常に一貫して、かつ公平に適用されなければなりません。特定の人物に有利な運用や恣意的な適用、適用漏れは、規程の信頼性を損ない、税務調査で厳しく指摘されます。税務調査では、規程の存在だけでなく、規程に沿った安定運用が行われているかが特に重視されます。

証憑書類(出張報告書など)の重要性

適正な運用を証明し、税務調査に対応するため、関連する証憑書類の作成・保管が不可欠です。

  • 出張報告書
    日当支給の根拠であり、出張が業務目的であったことの証明として必須です。税務調査では「カラ出張」でないことの証明が求められるため、以下の要素を具体的に記載する必要があります。
    • 報告者・出張者情報
    • 出張期間・日程
    • 出張先(具体的な訪問先、相手など)
    • 出張目的(具体的な業務目的)
    • 業務内容・スケジュール(具体的な活動内容)
    • (任意だが推奨)成果・所感
    • 精算対象経費
    • (必要に応じ)添付書類(領収書、会議資料、名刺など)
  • 領収書
    • 実費精算の場合は原則必要です。法人税法上は、消費税の特例適用時でも経費の証憑として重要です。
  • 関連書類
    • 出張命令書、承認記録、旅費規程本体、承認議事録などを整理し、法人税法に基づき原則7年間保存します。

記録が不十分だと、経費否認や重加算税のリスクが高まります。

出張の実態確認と不正リスク

支給対象は、あくまで業務遂行のための実態ある出張に限られます。個人的な旅行や、実質的な通勤への適用は認められません。

税務調査では「カラ出張(架空出張や私的旅行の偽装)」は重点的にチェックされます。具体的な手口としては、航空券や新幹線チケットを予約してキャンセル・払い戻しを行い差額を得る、安いホテルに泊まって規程の上限額を受け取り差額を着服する、などが考えられます。また、業務出張に個人的な観光費用などを紛れ込ませるケースも否認対象です。発覚すれば経費否認に加え、重加算税などの重いペナルティが課されます。

出張の実態を証明するためには、出張報告書に加え、訪問先とのメールのやり取り、会議の議事録、現地での活動を示す写真、取得した名刺など、客観的な証拠を可能な限り残しておくことが有効です。

通勤手当との区別に関する注意点

通勤手当は原則として給与所得であり、社会保険料の算定基礎にも含まれます。これを誤って非課税の出張旅費として処理してしまうと、所得税や社会保険料の計算誤りとなり、追徴課税や保険料の追徴リスクが生じます。

正式な承認と社内周知

作成した旅費規程は、取締役会や株主総会などで正式に承認を得る必要があります。承認された規程は、全役員・従業員に内容を明確に周知徹底します。就業規則の一部となる場合は、労働基準監督署への届出が必要な場合もあります。

旅費規程のリスクとペナルティ

運用を誤ると、深刻な税務リスクやペナルティにつながります。

給与認定リスクとその影響

最大のリスクは、支給した旅費(特に日当)が「社会通念上相当な範囲」を超えている、または根拠不十分と判断され、給与または賞与として認定(給与認定)されることです。

給与認定されると、以下の連鎖的な影響が発生します。

  • 個人への課税
    • 給与所得として所得税・住民税が追徴課税されます。
  • 法人における損金算入否認
    • 役員への支給分が役員給与の損金算入要件を満たさなくなり、損金不算入となる可能性があります。
  • 消費税仕入税額控除の否認
    • 課税仕入れとみなされなくなり、控除済み消費税額が否認されます。
  • 社会保険料への影響
    • 給与認定額が算定基礎に含まれ、過去に遡って社会保険料負担が増加する可能性があります。

当初意図した節税効果が失われ、予期せぬ多額の追加負担が発生する恐れがあります。

否認された場合の追徴課税

修正申告が必要となった場合、本来の税額(本税)に加え、以下の附帯税(ペナルティ)が課されます。

  • 過少申告加算税
    • 追加本税の原則10%(一定額超は15%)。
  • 不納付加算税
    • 源泉所得税の納付漏れの場合、納付すべき税額の原則10%(自主納付は5%)。
  • 重加算税
    • 事実の隠蔽または仮装があった場合(例:カラ出張のための書類偽造 など)、過少申告加算税等に代わり課される最も重いペナルティ。税率は追加本税に対し、過少申告で35%、無申告で40%。法人税等で重加算税が課される場合、関連する消費税についても重加算税が課されるのが一般的です。
  • 延滞税
    • 法定納期限からの日数に応じて課される利息相当分(最大14.6%)。

税務調査は通常過去3~5年分ですが、不正行為があれば最大7年分遡及される可能性があります。

信用リスク

重大な否認や不正が発覚すれば、金銭的ダメージに加え、企業の社会的信用も低下します。

リスクを回避・軽減するための対策

これらのリスクを避けるためには、以下の対策が有効です。

  • 妥当な金額設定
    • ベンチマーク等を参考にしつつも、過度に高額な設定は避け、自社の状況に照らして合理的に説明可能な範囲で金額を設定します。
  • 厳格な証憑管理
    • 出張報告書や領収書などの証憑書類を、規程に基づき漏れなく、かつ正確に作成・保管します。これが税務調査における最も強力な防御策となります。
  • 定期的な見直しと更新
    • 経済状況の変化、物価や交通費の変動、法改正などに対応するため、旅費規程の内容や支給額を定期的に(例えば年1回程度)見直し、必要に応じて更新します。
  • 内部牽制・監査
    • 規程の運用状況を定期的にチェックする内部監査体制を構築したり、経理部門による申請内容の確認プロセスを強化したりすることで、不正や誤用を未然に防ぎます。
  • 専門家への相談
    • 規程の作成・見直し、具体的な運用方法、税務調査への対応などについて、税理士などの専門家に相談し、アドバイスを求めます。

旅費規程を運用する上での注意点と成功のポイント

過去の否認事例やよくある失敗から学び、成功のためのポイントを取り入れましょう。

よくある失敗例 (陥りやすい罠)

  • 節税効果偏重
    • 規程の本来の目的である経費管理の効率化や公平性確保を軽視し、税負担軽減効果のみを追求してしまうこと。
  • テンプレートの安易な利用
    • インターネット等で入手したテンプレートを、自社の実情に合わせてカスタマイズせずにそのまま利用してしまうこと。
  • 金額設定の根拠の欠如
    • 合理的な根拠なく、単に節税効果が高そうな金額や、経営者が望む金額を設定してしまうこと。
  • 規程があれば安心という誤解
    • 規程を作成しただけで満足し、その後の規程に沿った安定運用と証憑管理を徹底しないこと。
  • 規程の陳腐化
    • 導入後に見直さず、経済状況や社内環境の変化に合わせて規程を見直さず、実態と乖離したまま放置してしまうこと。
  • 専門家への相談不足
    • 税務上の判断が難しい点について、専門家(税理士等)に相談せずに自己判断で進めてしまうこと。顧問税理士が規程導入に消極的な場合に、適切な代替案やリスク評価を行わないことも含まれます。

成功のためのポイント

  • バランスの追求
    • 節税効果の追求とコンプライアンス遵守、リスク管理のバランスを常に意識し、過度な負担軽減に偏らない、持続可能な運用を目指します。
  • 自社最適化
    • 会社の規模、業種、出張の頻度や内容、従業員構成などを考慮し、テンプレートに頼るのではなく、自社に最適化された、具体的で実行可能な規程を作成します。
  • 明確なプロセス
    • 出張の申請から承認、報告、精算に至るまでのプロセスを明確に定義し、マニュアル化するなどして、誰が担当しても一貫した運用ができる体制を構築します。
  • ICTの活用
    • 経費精算システム等を導入し、申請・承認プロセスの効率化、データ集計・分析、規程チェックの自動化などを図り、事務負担の軽減と内部統制の強化を目指します。
  • 透明性の確保
    • 規程内容やルールを全従業員に明確に伝え、理解を求める。
  • 専門家の活用
    • 重要な局面では税理士等の専門家の助言を積極的に求める。
  • 税務調査への備え
    • 税務調査を常に念頭に、いつでも説明できるよう証憑書類を整理・保管する。

特に、出張の業務関連性を証明する出張報告書は、金額の妥当性が争われた場合やカラ出張が疑われた場合の強力な防御手段となります。規程を整備することと並行して、この「証拠固め」を徹底することが成功の鍵です。

まとめ

旅費規程は、正しく設計・運用すれば、企業の経費管理を効率化し、公平性を担保するだけでなく、法人税、消費税、さらには役員・従業員の所得税・住民税、社会保険料に至るまで、多方面にわたる適正な税負担の軽減に貢献しうる、有効なツールです。特に、日当の非課税扱いや社会保険料算定基礎からの除外は、実質的な手取り額の増加につながり、従業員のモチベーション向上にも寄与する可能性があります。

しかしながら、そのメリットを享受するためには、日本の税法、関連通達、判例等を遵守し、税務調査においてもその正当性を主張できるだけの、実態に即した規程と、何よりも規程に沿った厳格かつ安定的な運用が不可欠です。特に、「社会通念上相当」とされる支給額の設定、全従業員への公平かつ一貫した適用、そして出張の業務関連性を証明する出張報告書をはじめとする証憑書類の徹底した管理は、否認リスクを回避するための生命線となります。

安易な導入や、実態を伴わない形式的な運用は、給与認定、損金不算入、追徴課税(重加算税を含む)、社会的信用の失墜といった、深刻なリスクを招きかねません。

以上の点を踏まえ、旅費規程の導入・見直しを検討されている企業、あるいは既に運用中の企業に対して、以下の点を推奨します。

  1. 規程の整備・見直し
    • 未導入の場合は、自社の実情に合った旅費規程を正式に作成・承認します。既に規程がある場合も、現行の法令や事業環境、出張実態に照らして内容が適切か(特に支給額の妥当性、出張の定義、手続きなど)を定期的に見直します。
  2. 合理的な金額設定
    • 日当や宿泊費の支給額は、客観的なベンチマークを参考にしつつ、同業他社比較や自社の状況を総合的に勘案し、税務調査で合理性を説明できる範囲内に設定します。
  3. 証憑管理体制の確立
    • 出張報告書の提出を義務化し、その記載項目(目的、日時、場所、内容等)を具体的に定めます。領収書と合わせて、体系的に整理・保管するプロセスを確立・徹底します。
  4. 一貫性と公平性の担保
    • 規程を全対象者に周知し、例外なく、規程通りに運用する体制を構築します。安定的な運用こそが重要です。
  5. 定期的なレビュー
    • 年に一度など、定期的に規程の内容と運用状況を見直し、必要に応じて改訂します。
  6. 専門家との連携
    • 規程の作成・レビュー、金額設定の妥当性判断、運用上の疑問点などについては、必ず税理士に相談し、専門的な助言を得ることを強く推奨します。

旅費規程は、正しく活用すれば企業経営における有効な施策となり得ますが、その運用には細心の注意が必要です。この記事が、皆様の適正かつ効果的な旅費規程の活用の一助となることを願っております。

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